ごあいさつ
診療内容/病気の解説
咽喉頭異常感
症状 のどがイガイガする、チクチクする、異物があるようだ、かゆい、引っかかるようで咳が出る、飲み込むときに引っかかる、何か変など非常に多岐にわたる症状があって、もしかすると喉頭ガンはないかなどと心配して受診して来ることが多く見られます。確かに時として咽頭ガンや喉頭ガンが見つかることもありますが、多くの場合はそれ以外に原因がみられます(ただし喫煙量の多い人と飲酒量が多い人は要注意です)。
検査 鼻から細い管を入れてのどを見る電子内視鏡検査(喉頭ファイバー検査)によって異常の有無を見ます。腫瘍がなくとも何らかの炎症所見がある場合があります。
原因/治療 咽の違和感を引き起こす原因には様々のものがありますが、明らかな癌や腫瘍がない場合は何らかの炎症がある場合が多いです。
1.後鼻漏 鼻の奥のノドとのちょうど境目あたりから鼻汁が落ちてくるのを後鼻漏と言います。これがノドに引っかかって違和感の原因になることがあります。この場合は、慢性副鼻腔炎が原因ですので、その治療をします。(慢性副鼻腔炎の項参照)
2.慢性扁桃炎/上咽頭炎 扁桃に米粒のような、かすがたまることもあり、これを扁桃陰窩膿栓と言います。これは慢性扁桃炎の所見です。また鼻のつきあたりにあるアデノイドが慢性炎症をおこしていて、ファイバーでみるとやや赤味があり、こするとすぐ血が混じり、痂疲がついていたりします。このような場合は、扁桃の吸引・消毒、アデノイドのGスポット療法(塩化亜鉛を塗布する治療)をするとともに、炎症をとる薬を処方します。急性期には抗生剤ですが、溶連菌感染があればペニシリン系の抗生剤を2週間内服します(溶連菌感染は迅速キットで検査できます)。慢性期であれば、漢方薬(桔梗湯、小柴胡湯加桔梗石膏など)を処3.ノドのアレルギー 咽の奥がかゆいような感じがする、髪の毛や毛糸がはさまっているような違和感が続いてせきがでる。普通の咳止めではあまり効果がないような場合、疑われます。抗アレルギー剤の投与やネブライザー治療、咳喘息のような場合は喘息治療をします。
4.咽頭喉頭逆流症/逆流性食道炎GERD ノドに胃液が逆流してくることで起きる違和感もあります。以前には日本人ではあまりないとされていましたが実際にはかなりの数の患者さんがいます。時にはこれが原因で耳の詰まり感や中耳炎を起こすこともあります。胸焼け・ゲップ・時として胸痛などが出ることもあります。横になったり力んだときに症状が強くなったり、胃液が上がってくるような人はまずこの咽頭喉頭逆流症があると診て間違いないでしょう。胃カメラでみても所見がない人が半分以上いますが、喉頭ファイバーでよく観察すると食道の入り口(下咽頭)に唾液がたまっていたり、咽頭粘膜のクリアランスの低下(粘膜がベタベタしている)、咽頭喉頭の間の粘膜がやや赤味をおびて炎症があるなどの所見があることがあります。今はとてもいい薬がありますので、これを使うと嘘のように症状が楽になります。咽喉頭異常感の半分以上がこのせいだと言っている先生もいるくらいで、実際かなりこの治療で改善する人がいます。内科ですでに胃酸を抑える胃薬をもらって飲んでいる人もいますが、胃薬の種類を変えてみたり、食道の動きをよくする薬や胃酸の中和剤などを併用してはじめて改善してくる人もいます。
5.その他 はっきり原因がわからない人。ストレスなどにより違和感が出ることもあります。きっかけがはっきりしているときには診断は容易ですが、難しいこともあり、薬を使って改善するかどうかで診ることもあります。主に精神安定作用のある漢方薬(柴朴湯、半夏厚朴湯など)を処方する場合が多いです。
まず咽の違和感は明らかに腫瘍のようなものがないことを診ることが大事なことです。
扁桃腺とは一般的に口蓋扁桃のことをさしますが、他にもアデノイド(咽頭扁桃)や舌扁桃などもあり、それらすべてを合わせてワルダイエル咽頭輪と言っています。扁桃炎とは、細菌やウイルスに感染することが原因で、扁桃に炎症が生じている状態を指します。
原因 扁桃炎は、細菌やウイルスなどに感染することを原因として発症します。具体的には、溶連菌や黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、梅毒、淋菌などさまざまな細菌が原因となります。また、ライノウイルスやコロナウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、EBウイルスなどウイルスが原因で発症することもあります。小児期のお子さんは、学校や幼稚園、保育園などの集団生活を通して病原体にさらされることが多いため、こうした年齢的な要素も扁桃炎の誘因であるといえます。また、喫煙や飲酒の習慣と関連して、扁桃炎が生じることもあります。
症状/治療 溶連菌に関連した扁桃炎では腎臓や心臓に合併症が生じることがあり、血尿や息切れ、心雑音などがみられることもあり注意が必要です。また、扁桃炎と関連して(扁桃病巣感染症)、免疫異常が惹起され本来は生体を守るべき免疫物質のひとつであるIgAが、腎臓の糸球体に炎症を起こすIgA腎症や、手のひらや足の裏に膿が溜まった皮疹が多くみられる掌蹠膿疱症や胸肋鎖骨過形成症、慢性微熱の全身疾患が誘発されるケースもあります。溶連菌感染は迅速キットで診断できますが、それ以外は、扁桃に付着する膿を培養に出すなどして起炎菌の診断を行います。急性期の治療は、経口ペニシリン系の抗生剤が主体となりますが、耐性菌を疑えばニューキノロンを処方します。食事ができないくらい痛みがひどかったり、扁桃腺の奥にまで炎症が及んでしまったり(扁桃周囲炎)、扁桃の奥に膿がたまってしまったり(扁桃周囲膿瘍)する場合は抗生剤の点滴や場合により切開排膿が必要ですので、症状に応じて入院をお勧めしています。また、扁桃病巣感染症を持っている場合や扁桃炎を短期間にくりかえしたり、年に4,5回習慣性に起こしていれば手術適応がありますので、入院での手術をお勧めしています。