鼻の中は「鼻腔」と「副鼻腔」とでできています。副鼻腔炎とは、鼻腔の周りにある副鼻腔が炎症を起こす病気です。副鼻腔は、顔の左右にそれぞれ4個ずつ、合計8個あり、その中には空気が入っていて、小さな穴で鼻腔とつながっています。
鼻腔と副鼻腔の図
副鼻腔炎には、「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」とがあります。 急性副鼻腔炎は、かぜが長引くとなる病気ですが、はじめはたいていウイルス感染が原因で起こります。しかし、たいてい2,3日で細菌性の炎症に移行していきます。起炎菌は、インフルエンザ菌と肺炎球菌、そしてモレキセラカタラーリスです。一般的に軽症のうち(鼻水がサラサラ)は、抗菌薬なしで様子をみることが推奨されていますが、ネバネバしてきて頻回に鼻をかんだり、頬部が重かったり、頭痛があれば抗菌薬の投与が推奨されます。インフルエンザ菌や肺炎球菌は特に耐性菌が多く、ペニシリン系やセフェム系が効きにくくなっています。そのような場合は、ペニシリン系やセフェム系の高用量(普通の1.5倍位)やキノロン系が使われます。普通は、1か月程度で治ります。 一方、慢性副鼻腔炎とは、急性副鼻腔炎が長引いたり繰り返されたりして、その症状が3カ月以上続く副鼻腔炎のことを指します。治療は、まずは保存的治療です。去痰剤の一種であるムコダインとマクロライド系抗生剤の少量長期投与(2か月程度)を併用する場合が多いです。それでも症状が改善しなかったり、鼻腔ポリープで鼻閉があったり、XーPで副鼻腔の陰影が残存していれば手術治療をお勧めしています。手術は、内視鏡下鼻副鼻腔手術になります。希望により、横須賀共済病院やうわまち病院に紹介させていただきます。
近年話題になっている副鼻腔炎で、「好酸球性副鼻腔炎」というものがあります。好酸球とは、アレルギー性鼻炎や喘息などアレルギー反応に関わる白血球の一種です。アレルギーを持つ人がかかりやすく、効果の高い薬はステロイドのみですが、ステロイド治療を止めると元に戻ってしまう傾向が強いのが特徴です。近年、アレルギー性鼻炎患者の増加によって、好酸球性副鼻腔炎を発症する人が増えてきていますが、根治が難しく、現在も研究が続けられています。手術しても再発してきたり、ステロイドの内服をやめられないような人は、難病指定の適応になる場合があります。