耳鳴り
耳鳴りはどうして鳴るの?
加齢性難聴の患者さんでは、だんだんと高い音が聞きづらくなります。そのため、脳は「これまで聞こえていたはずの高い音を聞き取ろう」として、減ってしまっ電気信号をもとに戻そうと過度に興奮します。この「脳が頑張っている音」が耳鳴りです。ですので、高い音が聞き取りづらい人は「キーーーン」という高い耳鳴りを感じています。多くの人は20代以降で聴力低下が始まります。耳鳴りは少なからず誰でもあるものなのです。たとえば、無音室のような静かな場所に入るとほとんどの人が耳鳴りが聞こえてきます。ですから、耳鳴り患者さんのほとんどは、騒がしいところにいるときは耳鳴りを忘れています。
耳鳴りは、そのように誰でも鳴っているのですが、ストレスや不安といった<苦痛の脳>が働いてきたり、さらに不眠や緊張といった自律神経の乱れがあると増悪して大きく聞こえてきてしまいます。そのような悪循環でひどくなっていきます。
このような仕組みをきちんと理解することで、不安がなくなり耳鳴りが改善する人もいます。また、難聴が耳鳴りの原因になっていますから、その原因を治せれば治すことが治療に直結していきます。ただし、加齢性難聴は治療はできませんので、補聴器をしていくことが耳鳴りの治療になると最近では考えられています。ただし、補聴器による治療は、脳のリハビリをすることでもありますので、3か月程度はきちんと起きている間は補聴器をつけていかなくてはいけません。
また、雑音があれば耳鳴りが気にならないとの観点から、TRT治療という方法もあります。これは、ザーというような雑音を発生する器械(補聴器のようなもの)をつけて、毎日耳鳴りが気になる間雑音を聞いてく治療ですが、やはり6ヶ月以上続けないと効果が出てこないとも言われています。この器械は、6~7万円と高いため、とりあえずはトランジスターラジオの周波数が合わないときの音を聞いていただくとか、耳鳴りが気になるときはテレビかラジオをつけておいていただくことをおすすめしています。
それでもやはりすぐに何とか耳鳴りを鎮めてほしいという方もいらっしゃいますので、その場合は、何らかの薬物療法を検討することになります。一般に使われているのは、神経代謝賦活剤のアデホス、耳鳴り改善剤ストミンA、末梢神経を改善させるビタミンB12のメチコバールなどですが、漢方薬も使う場合もあります。当院の耳鳴り患者さんには主に、冷え性で腰痛持ちの方には 牛車腎気丸、頭痛や高血圧がある人には釣藤散を処方しています。その他、あまりに音が大きくて困っている人には、神経を鎮める背ディール、ソラナックス、デパスなど、不眠になっている人には睡眠改善剤などを処方します。
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